正味生味

普段の日常と、その中で見つけた少しの疑問を書き連ねます。文字書き練習です

国同士の格差の原因に迫る「銃・病原菌・鉄」【書評】

 

 

日本は高度経済成長期を経て先進国の仲間入りを果たしました。今や、コンビニやスーパーではあらゆる商品が置かれておりご飯には困ることはないでしょう。しかし一方で、飢餓で苦しむ国や、ジャングルに住み食用植物を収穫したり狩猟を行い日々の食事をとる生活を過ごしている人たちもいます。

その理由を「環境のせい」と考えるのは容易ですが、何の要素が文明の発展に差を生じさせることになったのかまでは想像し難いものです。なぜ私たちは食事に困らない生活を過ごせている一方でアフリカなどの国では飢餓で多くの人がなくなっているのか。アフリカが先進国で、日本が発展途上国にならなかった理由はなんなのか。現代の常識になっている格差の原因は紀元前から始まっていたのです

 

 

そこで今回紹介する本は「銃・病原菌・鉄(上)」です。

 

本書の上巻では文明の発展に影響を与えた様々な要素の説明がありましたが、今回は私が特に気になった農業について紹介します。

 

 

農業がもたらした格差

 

 

紀元前のころ人類は一日が始まるとともに獲物を狩り、木の実を取りその日の食事を探していた狩猟民族でした。しかし今私たちは狩猟ではなく育てられた家畜や穀物を食べるようになっています。その変化はある時に人は「栽培する」こと、「保存する事」を覚えたからです。狩猟時代に狩った生き物は冷蔵庫なんてもちろんなかった当時すぐ腐ってしまうため保存がききませんでした。しかし穀物を栽培するようになり保存が可能になったため常に全員が食事を作る作業に従事する必要がなくなりました。そこで陶器や武器を作る職人や集団を統括するための王が生まれました。そして技術や政治統率力が狩猟民族に比べ圧倒的に進歩することになりました。その差が格差を生むことになりました。

 

農業が格差を生んだのは先述の通りですが、農業の時期に差が生まれた原因は何でしょうか。栽培に適した植物は比較的温暖な地域で四季がはっきりしたところで育ちます。また水の有無、周辺の地形にも影響を受けます。つまり、周辺に水があり、平地で、温暖な気候で、かつ食べられる種子を持つ植物が存在している地域が農業を始めるのに適していることになります。そしてこれらの条件を満たす地域がヨーロッパ付近の地域になります。かつてヨーロッパが全世界を支配していた時代があったのはこれらの要因が重なったからというのが一つの原因です。

 

 

 

これだけでなく「病原体が与えた侵略における影響」「大陸の形による農業普及率の違い」など興味深い話がたくさんありました。

「格差があるのは当然」と思い込んでいた私にとって、常識の原因を追求している本書は、内容だけでなく考え方も学ばされてばかりでした。

上下巻ありかつ300ページ近いので読み終わるのは大変ですが、一読の価値はあります。ぜひ読んでみてください。